歯科治療におけるストレスとその影響
歯科治療は、すべての年齢層にとって必要不可欠な医療行為であり、日常のケアの一環として多くの方に受け入れられています。しかし、実際には多くの患者さまが治療に対して強いストレスを感じることがあります。治療に対する不安や恐怖、緊張感があると、それが治療過程に悪影響を及ぼすこともあります。特に、持病をお持ちの方や高齢者にとっては、ストレスが全身的な健康状態にまで影響を与え、治療に伴うリスクが高まる場合があります。例えば、神経性ショックのような予期せぬ症状が現れることもあり、こうしたリスクを軽減するためには、患者さま一人ひとりに対する慎重な対応が必要です。
静脈内鎮静法について
静脈内鎮静法(IVS: Intravenous Sedation)は、麻酔薬を静脈から注入することで、治療中に患者さまがリラックスした状態を維持できる方法です。この治療法は、緊張や不安、嘔吐反射、痛みを伴う反応を抑え、安心して治療を受けられる環境を提供します。患者さまは治療中、まるで眠っているかのような深いリラックス感を得ることができ、治療の記憶がほとんど残らない場合が多いです。これは、笑気吸入鎮静法と比べても鎮静効果が安定している点が大きな特徴です。
ただし、薬物の作用や投与量によっては、呼吸や循環機能に影響を与える可能性もあるため、治療中は血圧や心拍数などのバイタルサインを常に監視し、万が一の事態に備えることが不可欠です。このように、静脈内鎮静法は、歯科治療に対する不安や恐怖を抱える患者さまにとって非常に有効な治療法であり、安全で快適な治療環境を提供するための選択肢として広がりを見せています。
静脈内鎮静法のメリット・デメリット
静脈内鎮静法のメリット
メリット① ストレスを感じずに治療を受けられる
- 静脈内鎮静法は、インプラント治療に伴う不安や恐怖を大幅に軽減し、患者さまがリラックスした状態で治療を受けられる点が大きなメリットです。特に、手術に対して強い恐怖を感じる方にとっては、静脈内鎮静法が非常に効果的であり、緊張を和らげることで、麻酔の効果も向上させることが期待できます。
メリット② 治療中の音や振動の記憶が残りにくい
- 静脈内鎮静法には健忘効果があり、インプラント治療中に感じる音や振動などの不快な記憶が残りにくくなります。患者さまは治療中の出来事をほとんど覚えておらず、治療が終わった後にはまるで時間が飛んだように感じることが多いです。このため、歯科治療に対するトラウマを防ぐことができ、治療への恐怖心を減らすことができます。
メリット③ インプラント治療の安全性が向上する
- 静脈内鎮静法を使用するインプラント治療では、麻酔医が常に患者さまの脈拍や酸素飽和度、血圧をモニタリングしています。これにより、万が一、患者さまの状態に変化が生じた際にも、速やかに対応できるため、治療はより安全に進行します。また、リラックスした状態を保つことで、自然と血圧や心拍数が安定し、治療がより円滑に進むため、安心して治療を受けることができます。点滴から鎮痛薬や腫れ止め薬を投与する事もできるので、手術後の痛みを大幅に軽減する事が可能になります。
静脈内鎮静法のデメリット
デメリット① 費用が高くなる
- 静脈内鎮静法を利用した治療は、局所麻酔のみで行う場合に比べて、費用が高くなる傾向があります。これは、麻酔医の常駐や専用機材が必要になるためです。
デメリット② リスクが伴う
- 静脈内鎮静法は全身麻酔とは異なり、意識を完全に失うことはありませんが、いくつかのリスクが伴います。例えば、血圧の変動や呼吸機能への影響が出る可能性があります。しかし、麻酔医が常に患者さまの状態を監視し、異常が発生した場合には迅速に対応できるため、リスクは最小限に抑えられます。また、薬剤によっては副作用が出ることもありますが、麻酔医が適切に管理しながら進行するため、過度な心配は不要です。
デメリット③ 治療後の安静が必要
- 静脈内鎮静法を使用した治療後は、治療後数時間は眠気や意識がぼんやりします。意識が完全に回復するまでに約2時間かかることがあり、帰宅後はゆっくりおやすみいただきます。また、当日の運転は避ける必要があり、治療後の活動に一定の制約がある点はデメリットとして考慮すべきです。
これらのメリット・デメリットを踏まえ、静脈内鎮静法を利用した歯科治療を検討する際は、患者さま一人ひとりの状態や治療に対する不安をしっかりと確認し、最適な治療計画を立てることが大切です。
静脈内鎮静法はこんな患者様に最適です
- 歯科治療に恐怖心があり、治療がなかなか進まない方
- 幼少期の歯科治療がトラウマとなり、治療を避けてしまう方
- 麻酔が効きにくく、治療中に痛みを感じやすい方
- 嘔吐反射が強く、治療が困難に感じる方
- インプラントや親知らずの抜歯など、痛みが強く長時間の治療を希望される方
- 口腔内に器具が入ると極度に緊張してしまう方
- 遠方から通院されており、できるだけ通院回数を減らしたい方
- すべての歯科治療を一度に済ませたいとお考えの方
- 歯科恐怖症ではないが、快適な環境でリラックスして治療を受けたい方
- パニック障害があり歯科治療に不安がある方
このような方々には、静脈内鎮静法を用いたリラックス治療が効果的です。
当院では日本歯科麻酔学会認定医が担当します
井波 美帆(歯科医師:一般歯科/麻酔科医)
当院では、日本歯科麻酔学会認定の医師が担当し、血圧計や心電図を用いてバイタルサインを継続的にモニタリングしながら、全身の状態をしっかりと管理しています。これにより、安心・安全な環境で治療を受けていただくことが可能です。
さらに、当院の認定医は女性歯科医師が担当いたします。たとえ治療に対する恐怖心が和らいだとしても不安がある方もいらっしゃるかと思いますが、細やかに全身の管理を行いますので、どうぞご安心ください。
※日本歯科麻酔学会についてはこちらをご覧ください。
静脈内鎮静法の治療の流れ
1問診と説明
診療前に問診を行います。患者さまのご希望や治療内容について医師としっかり話し合い、納得いただいた上で治療を開始します。
2血圧測定などの全身モニタリング
治療前には、術前の全身状態を確認するためのモニタリングを行います。血圧や脈拍の測定を行い、安全に治療を進める準備を整えます。
3点滴の開始
静脈内鎮静法を用いてリラックスした状態を作ります。この方法により、眠っている間に痛みを感じることなく治療を受けることができます。
4無痛リラクゼーション治療
鎮静状態でリラックスしながら、無痛治療を進めます。治療中はうとうととした状態で、痛みを感じることなく安全に治療が進行します。
5治療後の回復の確認
治療が終わった後は、通常5~10分程度で目が覚めていきます。ご自身で歩行ができることを確認し、ご帰宅いただきます。
静脈内鎮静法の費用について
1回 | 66,000円~(税込) |
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静脈内鎮静法に関するよくある質問
Q1. 予約なしで治療を受けることは可能ですか?
A1: 当院では完全予約制を採用しています。治療をご希望の際は、まずお電話やメールでお問い合わせください。初診の際には問診票のご記入が必要となりますので、予約時間の10分前にご来院いただくようお願いしております。
Q2. 初診当日に静脈内鎮静法を使用した治療を受けることはできますか?
A2: 初診当日に静脈内鎮静法を実施することはできません。安全に治療を行うためには、事前に問診や患者さまの全身状態の確認が必要です。また、治療当日は食事制限や特定の注意事項があるため、事前のご案内が必要になります。
Q3. 一度で治療を終わらせたいのですが、何回で完了しますか?
可能な限り一度の治療で進めますが、治療内容や箇所が多い場合、一回で完了しないこともあります。治療の進行は、患者さまの状態や治療内容に応じて異なりますので、初診時に詳しくご案内いたします。
Q4. 静脈内鎮静法を使うと、通院回数が減りますか?
A4: 1度にできる限りの範囲を治療していきますので、一般的な保険診療と比較して通院回数は大幅に少なくなります。
Q5. 静脈内鎮静法は保険適用されますか?
A5: 当院では、静脈内鎮静法は保険適用外の自由診療となります。
Q6. 静脈内鎮静法の料金を教えてください。
A6: 静脈内鎮静法の料金は66,000円~(税込)です。予約時に事前に予約金としてお支払いいただきます。治療時間が1日かかる場合等はその限りではありません。
Q7. 静脈内鎮静法を受ける際の注意点はありますか?
A7: 静脈内鎮静法を受ける際には、以下の点にご注意ください。
• 当日は飲食の制限がございます。
• 車、バイク、自転車のご自身での運転は避けてください。また、治療後は眠気やふらつきがあるため、激しい運動やアルコール摂取も控えてください。
• 指にモニターを装着するため、ネイルは落としてご来院ください。さらに、ストッキングやタイツ、ブーツ、ヒールは避け、リラックスできる服装でお越しください。
• キャンセルや予約の変更はできかねます。万が一キャンセルや変更をされる場合、予約金の返金はいたしかねますのでご了承ください。